『i fell 読書風景』 No.36

岩井:でもあまりに良くできているから、ちょっと狐につままれたような感じにならないこともないんです。
佐藤:ええよく分かります。別の言い方をすると、「分かったような気にさせる」ということですよね。
岩井:それは狙っているところですか。
佐藤:いえ、もちろん本当に分かってほしいと思って作っています。でもそれがアニメーションの形になると「分かる」レベルに届かなかったのかもしれません。

岩井:「足りないこと」がすごく大事じゃないかなと思うようになったんです。
佐藤:目の前でお父さんが何かを閃いた瞬間というのは子どもにすごく伝わると思いますから。
岩井:大半のものは、観る側はただ単に享受するという図式になってしまっている。目の前にいる子どもを喜ばせるために、紙とはさみで何を作ろうかと、自分の頭をフル回転させて考えるその瞬間の豊かさとはやっぱり違うと思うんです。